福岡地方裁判所 平成5年(わ)563号 判決 1993年11月02日
被告人
法人の名称
共祐産業株式会社
本店の所在地
北九州市八幡東区山路一丁目一五七六番地の三
代表者
氏名 倉石智
代表者の住所
北九州市小倉北区熊本三丁目一六番一-六一二号
被告人
氏名
倉石智
生年月日
大正一一年九月一一日生
本籍
福岡県前原市大字前原二八三番地
住居
北九州市小倉北区熊本三丁目一六番一-六一二号
職業
会社役員
被告事件名
右両名に対する法人税法違反被告事件
検察官
保坂洋彦
主文
被告人共祐産業株式会社を罰金二五〇〇万円に、被告人倉石智を懲役一年六月に処する。
被告人倉石智に対し、この裁判確定の日から三年間その刑の執行を猶予する。
理由
(罪となるべき事実)
被告人共祐産業株式会社(以下「被告会社」という。)は、肩書地に本店を置き、不動産の売買及び仲介等を目的とする株式会社であり、被告人倉石智は、被告会社の代表取締役としてその業務全般を統括していたものであるが、被告人倉石智は、被告会社の業務に関し、法人税を免れようと企て、被告会社の不動産売買を他人名義で行い、かつ、被告会社の不動産売買に関し架空仲介手数料を計上するとともに、それによって得た利益を仮名で定期預金するなどの方法により、その所得を秘匿した上、平成元年三月一日から同二年二月二八日までの事業年度における被告会社の実質所得金額が一億七四八七万六九九六円(別紙(1)の1ないし3修正損益計算書参照)、課税土地譲渡利益金額が一億一四八三万二〇〇〇円(別紙(2)脱税額計算書参照)であったにもかかわらず、平成二年五月一日、北九州市八幡東区平野二丁目一三番地一号所在の所轄八幡税務署において、同税務署長に対し、所得金額が九二六万九一一八円の欠損で、課税土地譲渡利益金額が三一三九万三〇〇〇円であり、これに対する法人税額が九三四万四六〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もって、不正の行為により、被告会社の右事業年度における正規の法人税額一億六八六万四二〇〇円と申告税額との差額九七五一万九六〇〇円(別紙(2)脱税額計算書参照)を免れたものである。
(証拠の標目)(括弧内の番号は検察官請求証拠番号の略である。)
一 被告人倉石智の当公判廷における供述
一 被告人倉石智の検察官に対する供述調書(乙二ないし一九)
一 秋山義己、勝田周、勝田修二郎、阿部羊梧、花岡真、柴田壽郎、木村裕(三通)、藤原洋二(五通)、山本進、原口清、益子八重子の検察官に対する各供述調書
一 査察官調査書(一四通)
一 平成元年三月一日から同二年二月二八日事業年度分の法人税確定申告書一綴(平成五年押第一四二号の1)
一 商業登記簿謄本
(法令の適用)
被告人倉石智の判示所為は法人税法一五九条一項、二項に、同共祐産業株式会社の判示所為は同法一六四条一項、一五九条一項、二項にそれぞれ該当するところ、被告人倉石智については所定刑中懲役刑を選択し、被告会社については罰金二五〇〇万円に、被告人倉石智については懲役一年六月にそれぞれ処し、被告人倉石智に対しては情状により刑法二五条一項を適用してこの裁判確定の日から三年間その刑の執行を猶予することとする。
(量刑の理由)
本件は、被告人倉石智が、自己の経営する被告会社の所得を秘匿して正規の法人税額の支払いを免れた事案であるが、被告人倉石は、高額の法人税を納付することを惜しみ、自己の経営する被告会社の所得を秘匿したものであって、その動機は誠に利欲的、自己中心的であると言わざるを得ず、酌量の余地はない。また、所得隠しの態様も、いわゆるダミー会社を介在させ、他人名義で取引を行うなど巧妙かつ悪質である。さらに、本件のほ脱税額は九七五一万九六〇〇円と高額に渡り、ほ脱税率も約九一パーセントに及んでいることから本件の結果も重大であって、納税の義務が国民として当然に負うべきものであることを顧みない被告人の刑事責任は重大である。しかし他方で、被告会社は本件脱税につき既に国税局からの摘発を受け、約一億五〇〇〇万円の追徴税を完納しており、一応の制裁は受けていると考えられること、被告人倉石は七一歳と高齢であり、健康に不安があること、最近は前科がないこと等の有利な情状も認められるので、これらを総合勘案して被告会社及び被告人倉石に対しては主文の刑を科すのが相当であると判断した。
よって主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 仲家暢彦 裁判官 洞敏夫)
別紙(1) 修正損益計算書
<省略>
別紙(2)
<省略>